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生徒に100%英語で会話させる方法

ディビッド・マーティン著

この論文は、やる気の無い(もしくはあまりない)生徒を抱えており、何よりもまず授業の始めから終わりまで生徒に英語で話して欲しい、と望んでいる先生方のために書かれたものです。主に日本の大学・短期大学・高校の先生を対象にしています。

そんなことは不可能だ、と思われるでしょうか。もしかしたら、既にそのような努力をしたものの、結局失敗に終わった経験がおありになるかも知れません。また現在あなたのクラスでは、授業中の20〜50%は日本語で話をしているのではありませんか。あるいは殆ど英語で話してくれないという状況かもしれません。

「100%英語で会話させる」という目標は、非現実的でしょうか?まずお断りしておきたいのは、100%という目標を設定したからといって、日本語を全面的に禁止するわけではないということです。決して日本語は絶対禁止であるとか、間違っているとか、英語より劣っているなどと口にしたり、態度に表してはいけません。英語オンリーよりも日本語を織り交ぜたほうが有効なケースもあるのです。例えば、難しい単語を英語で説明するよりも、日本語に訳した方が生徒には解りやすいものです。そうする事で説明の手間を省き、結果的に英語でコミュニケーションする時間をより多くとることができます。日本語が必要になってくるもう一つの例は、生徒が教師に(もしくは他の生徒に)「これは英語でなんて言うの?」と聞く時です。本論の主旨は、クラス内の会話は「極力」英語で行われるべきだということです。コミュニケーションが上手く行っているのなら、なおさらそうでなくてはいけません。

ここまでお読みになられた方は、では著者のクラスの生徒はほぼ英語で会話できているのか、と思われるでしょう。私は現在大学で、全くやる気がないか、もしくはやる気のあまりない生徒を相手に、4つのクラスを受け持っています。生徒は、平均して90〜95%英語で話をしています。最近では、ほぼ100%という日も増えてきました。クラスが始まってから現時点で四ヶ月目になりますが、最初の一ヶ月間は70%ほどしか英語で話していませんでした。

私自身が生徒に英語を喋らせようとする上で役立ったテクニックを、以下にご紹介しましょう。

1.第一日目から「100%英語で話す」という目標を設定する

授業第一日目に、生徒に対して目標をはっきりと説明しましょう。この時、中学・高校の六年間で生徒が受けてきたであろう英語教育(コミュニケーションベースではない)とあなたがこのクラスで生徒に求めていることとを、明確に比較対照して見せると良いでしょう。私はいつも生徒に、私(教師)に対してと自分自身に対して、契約を結ばせます。生徒は下記のような契約条項を読み、私は詳細について説明します。そして、生徒に同意する旨の署名をさせるのです。

私の約束

私はできる限り多く話すことを約束します。
私はミスを恐れないことを約束します。
私は決して日本語を喋らないことを約束します。
私はコミュニケーションを行うために英語を使うことを約束します。
私は分からない時には質問することを約束します。
私は楽しんで学ぶことを約束します!

*Copyright 2003 Talk a Lot, Book 1, EFL Press.

授業中、必要に応じていつでもこれらの約束事を思い出させることが大切です。

2.生徒の名前を覚える

生徒の名前がわからなければ、クラスを上手くコントロールすることはできません。もし生徒の誰かが日本語を話していたら、即座に「ユキ、英語で話をしているかい?」と対応しなければいけません。もちろん怒った様子でではなく、優しく、冗談めかして諭すようにするのです。生徒の名前を覚えるということほど重要なポイントはない、とさえ言えるかも知れません。少なくとも私は非常に重視しており、三度目の授業までには全ての生徒の名前を頭に叩き込むようにしています。

3.なるべく早く「クラスルーム英語」を教えるようにする

二度目や三度目の授業では、まず授業のなかで役に立つクラスルーム英語を教えるようにしましょう。生徒がこれらの表現をすべて暗記し、使えるように練習させなければなりません。また、これらは教師とのやり取りにだけ使うのではなく、生徒同士の会話でも使うので大変重要である、ということを理解させなければなりません。役に立つクラスルーム英語の例としては、以下のようなものがあります。

Do you have a partner?パートナーはいますか?
Let's be partners.パートナーになりましょう。
How do you spell...?…のスペルは?
What does ... mean?…は何という意味?
etc.

4.フリーカンバセーションで授業を始めるようにする

生徒のやる気を掻き立てて英語で会話させるのに最も効果的なテクニックを一つだけ選ぶとしたら、私は迷いなくこれを選びます。生徒をパートナーと向き合って座らせ、あるテーマについて決められた時間話し合うよう指示するのです。彼らはこの間、決して日本語を使ってはいけません!テーマは前日に何をしたとか、テレビ番組や映画、スポーツ等。コースが始まって間もない頃は2〜3分ほどにしておき、終わりに近づくに従って10〜15分に延長します(既習者レベルの場合)。過去数年間の経験で気づいたのは、フリーカンバセーションを行わずに授業を始めると、行った場合よりも生徒が日本語で喋りがちになってしまい、結局授業が失敗することが多いということです。フリーカンバセーションが効果絶大なのは、授業のウォームアップになり、生徒が「自分も英語でコミュニケーションできるんだ」という自信を持つことができるからなのです。

5.「フィニッシュ」と言った後が、本当の英語でのコミュニケーションのチャンスだということを説明する

生徒たちは、与えられた課題を終えると「フィニッシュ」と言って、他のグループが終るのを待つ間、パートナーと日本語で話し始めてしまいがちです。アクティビティの最中は勿論、アクティビティの合間も、互いに英語で会話することを目標にしましょう。

6.生徒が二列になって互いに向き合うような座席配置にする

フリーカンバセーションにおいて、下図の様に椅子を配置することを怠ると、生徒が無口になる傾向があることが分かりました。生徒の間には机や障害物を置かず、椅子を二列に向き合うようにして並べた配置が一番理想的であるといえます。(下図参照)この配置には、何かしら生徒を話しやすくさせる不思議な力があるようです。障害物がないので隠れることができず、英語を話さないといけない気分になるのかもしれません。また、英語でのコミュニケーションの上達に必要なアイコンタクトも、向き合って座ることで自然と可能になります。

もう一つの利点は、この配置は即座にパートナーチェンジをする上で大変便利だということです。生徒は立ち上がって時計回りに動くだけで、新しいパートナーと向き合えるのです。

7.「スピーキングマラソン」をコース中2回以上は実施する

私は大抵4回目か5回目のレッスンでスピーキングマラソンを実施し、その後も必要に応じて1度か2度おこなうようにしています。

スピーキングマラソン

パートナーと二人一組になります。基本的に何について話しても構いませんが、話をストップしてはいけません!3秒以上会話がストップすると、そのチームはアウトになります!もちろん、日本語で話をしたら即アウト!どのチームが一番長く話を続けることができるでしょうか?!

*Copyright 2003 Talk a Lot, Book 2, EFL Press.

生徒が何も思い浮かばない時は、沈黙を埋めるために何でもいいから話すように促しましょう。「えーと…」「そうねえ…」「チキン」「キッチン」等、何でも構いません。しかし、驚くべきことに、実際には3秒以上ストップしてしまうことは稀で、20〜30分話し続けたケースも多くあります。このアクティビティの間、先生は「お巡りさん」のように各グループを回り、3秒以上話がストップしていないか、日本語を使っていないか、チェックしなければなりません。ただし、生徒にできるだけ長く話させるためにも、あまり「アウト」を宣言しない方が良いでしょう。生徒に英会話に対する自信を植えつけるためには、スピーキングマラソンほど良い方法は無いかもしれません。

8.日本語で話してしまった言葉を紙に書かせる

授業の始めに小さなメモ用紙を生徒に配ります。そして、単語であれセンテンスであれ、授業中に口にした日本語を全てその紙に書きとめるよう義務づけます。さらに、授業の終わりにメモ用紙を回収し、どれだけ日本語を喋ってしまったのかをチェックする、と生徒に伝えます。 日本語で話したことを紙に書くことで、生徒は自分自身を冷静に見つめ、以後授業中に日本語を使う頻度を減らすことができるようになります。このような「自己観察」を生徒に課すようにして以来、私の授業において日本語を話す生徒が激減したのには正直驚いています。

もし多少なりとも日本語がお出来になるのであれば、生徒の話した日本語を黒板に書き出し、それを英語では何と言うのか教えるのも一つの方法でしょう。

9.「100%英語で話す」を達成できたら、授業を5分短縮する

私は時折、特にあまりにも生徒の日本語が目に余るときなどには、一旦授業をストップし、残りの時間を全員が100%英語で話し通すことができたら早く帰れる、と提案します。生徒は常に達成できるわけではありませんが、このゴール設定により、日本語での会話をかなり減らす事ができるのです。それでは逆に生徒が話すことを恐れてしまうのではと思われるかもしれませんが、実際には「早く帰れるかもしれない」と仄めかしてあげる方が、生徒はより頑張って英語で話そうとすることが分かりました。

10.生徒が日本語を話したら、その生徒の真似をする

これを効果的にこなすには、ある程度の日本語能力が必要になります。もしあなたが全く日本語を話せないのであれば、これを機会に勉強なされてはいかがでしょうか。生徒の日本語を真似して「今のは英語?(Is that English?)」と尋ね、すぐに英語ではどう言うのか説明することで、生徒を上手くコントロールできるようになります。往々にして生徒は、自分が喋った日本語は英語で何と言うのかを既に知っていることにすぐ気づきます。例えば、生徒はアクティビティを始める際パートナーに「いいよ」と日本語で言ってから開始することがあります。この時私なら「いいよ」と真似してみせ、「今のは英語?(Is that English?)」(もちろんひょうきんな調子で)と聞き返してから“Go ahead”を教えます。あくまでフレンドリーかつ自然に行うのが大切です。

11.生徒が完全に英語だけで話せるようになるために、熱意をもって指導する

生徒をやる気にさせるためには、時には教師というよりもコーチになる必要があります。彼らの習慣が変わり始めるまで、授業中に日本語を使ってはいけないということを辛抱強く、何度も繰り返して伝えなければなりません。あなたは教室内で今何が起こっているのか、常に隅々まで認識しているよう努め、生徒の発する言葉の全てに気を配らなければなりません。生徒の気がゆるんで日本語ばかり話しているようなら、時には叱咤してやることも必要ですし、失敗した時には励ましてあげましょう。 生徒は一夜にして劇的に変わるわけではありませんが、あなたの熱意にいつか必ず応えてくれるはずです。諦めてはいけません。

12.通常のアクティビティを「インフォメーションギャップ」に変える

単に知識を得るのみのアクティビティと違い、「インフォメーションギャップ」では、生徒は英語でコミュニケーションをとらざるをえません。インフォメーションギャップを実施している間はほとんど日本語が聞かれなくなったので、私も授業でこのアクティビティをよく使います。

13.生徒が興味を持ちやすく、役に立つと感じられるようなトピックやアクティビティを選ぶ

この項目を最後に据えたのには理由があります。生徒があなたの選んだトピックを「面白い」または「役に立つ」と思わなければ、上述のどのテクニックを試したとしても、上手くは行かないでしょう。あなたの生徒に英語で話をさせるためには、やる気を起こさせ、しかも実用的なトピックやアクティビティを選択することが不可欠なのです。

参考資料

Martin, David (2003). Talk a Lot, Book 2, EFL Press. Saitama, Japan.

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